EARTHQUAKE

地震対策への取り組み

タカラ式
フリーリーデッキ工法を巡って

タカラ式フリーリーデッキ工法の開発にご協力いただいた技術顧問有馬氏と
THKのおふたりを交え免震について語り合いました。

免震に本格的に取り組むことになったきっかけは
田中
阪神淡路大震災を経験した時に、大きい建物だけじゃなくて、いかに小規模な建築物に免震を広めていくかというのがものすごく大事なことだと感じました。
中村
オフィスにおった人ももちろん被害にあってるんですけど、やっぱあれは明け方の家で、ゆっくりしてる時に直下型地震が来たからあれだけの被害になってるんだと。そこを、免震せんことには、人は助けられないんじゃないかというところからですよ。
田中
十年近く前に中村とふたりで、いわゆるビジネスショーで、THKさんのあのベアリングの模型をみてるんですよ。
中村
僕はそれまで免震と言ったらゴムやと思ってたんですよ。イメージできないですよね、現場上がりはね。でもゴムって、ビルと違って上が軽いもんやったら一緒に動いてしまう、っていう気がしてて。とくに僕らがやってる木造二階建てなんて。でもあのベアリングを見て、こんだけスムーズに転がるんやったら、多分、木造も免震できるぞって。
有馬
阪神淡路の二日後に我々は現地に入って、ずーっと調査で見てまわって。連携会社の要人宅も調査するんですよ。やっぱり戸建て住宅もけっこう倒れてるわけですよ。そんな戸建てに対しても、助けないといけないんじゃないかな、というのが本腰を入れるきっかけになったのは間違いないですね。
一般の方にはなかなか免震って分かりづらいと思うのですが
有馬
一番よく分かるのがキャスター付きのキャリーバッグでしょ?それを机の上において、動かしてみて、そうすると、あのキャスターがなければキャリーバッグは倒れちゃんですよね。キャスターがあることによって下が動いても倒れない。これが免震の一番分かりやすい例。
中村
そうなんですよ。最初エンドユーザーさんに届くようにって説明するんですけどほんまに難しくて。それもね、免震が世の中に広まらないひとつの原因には絶対なっていて。
有馬
建物っていうのは損傷が起こって初めて地震のエネルギーを吸収したっていうことになる。たとえば鉄骨の建物は鉄骨がグニャッとなることによってエネルギーを吸収したことになる。コンクリートの建物はひび割れることによってエネルギーを吸収することになる。より吸収できるようにコンクリートの中に鉄筋が密に入っているわけですよ、今の設計法でいっちゃうと。でも限界なんですよはっきり言って。もう、これ以上鉄筋なんか入らない。そういうもので巨大地震のエネルギー吸収ができるわけないんだから。違った個所で、違った部材のエネルギー吸収するものをつくらないといけない。それが制振であり、免震なんですよね。そこらへんの道理というか、理屈を、お客さんに理解してもらうしかないですね。
戸建ての免震についてはどのようにお考えですか。
有馬
元々は免震構造っていうのは病院であったり、市役所であったり消防署だとか、学校とか、災害時にどうしても必要な建物にまず使われ、免震が普及でき始めたわけなんですけど。でも実際に大地震が起こった時に被害を受けたのは、おじいちゃんおばあちゃんが住んでいる戸建て住宅なんですよ。なおさら昼であれば、そういうことになりますよね。
中村
これから高齢化になっていくんで余計に。大地震後の余震に対する恐れだとか、次来た時に「もしかしてこの家つぶれるかもしれん」という恐怖感って、多分あれって被災された人にしかわからない。で、免震にすることによっておそらくめちゃくちゃ安心感は出ると思いますね。
有馬
免震にすると下は激しく動いているんですけど、建物自体はゆっくりゆっくり、船の上に乗っている感じですかね。そうすると、タンスだとかが倒れないんです。免震の目的は、建物のみならず収容物の無損傷。だから、大切な家財だとかが助かるし、将来の生活が守られることも大きなメリットなんですよ。
簡単に今回の工法のメカニズムについてお聞かせください。
有馬
ゴムっていうのは、大きなビルしか使えないんですよ。そんなもん一戸建てにつけたら硬すぎて一戸建てが固定されたのと同じで、力を受け流す柳にはならないんですよ。そうすると、それを柳にするにはどうすればいいのか、地震になったらピュッと空中に浮くことなども研究したんですよ。または吊ってしまうか、吊り構造も免震の一種なんですけど、あるいは滑り出してしまうか。一番手っ取り早いのは、滑りですね。面と面との滑りは摩擦がちょっと大きいんですよ。それを、リンクのスケートのように滑れるようにするにはどうしたらよいかが課題だったですよ。その解決にベアリングが登場するのです。二十数年前のことですよ。
戸建てなんかに免震ができるようになったのは、有馬さんが最初に発想した、ゴムではなりたたないんだけど、軽いものを免震化するためには、ころがりのようなもので受けて、あとはバネをつけて復元と減衰を別のものをつければ、ビルと同じような免震ができるだろうという発想だったんですよ。
村尾
元々、私たちは機械部品の製造を行っていたので、人の命に直接関わることはなかった。我々のこの部品を使った機械っていうのは、生活の中で最終的な商品の出る前の、製造設備の中ではたくさん貢献させてもらっているんですけど、実際にその建物の中とかですね、命というところに関わることは今までなかった。その意味で今回のプロジェクトに参加できたのはとても貴重な体験でした。
田中
十年以上前、はじめてベアリングのメカニズムを見たときに描いた「戸建てに免震を」という夢が皆様のご協力で実現できました。ありがとうございました。
THK株式会社

飛行機や医療機器、工業機器など世界中様々なシーンで活用されているTHKのコアテクノロジー。世界レベルの高い技術力により様々な免震ソリューションを提供しています。

公式サイト:http://www.thk.com/

株式会社A&T研究所有馬文昭

一級建築士。ゼネコンで免震装置(CLB)、制振装置(RDT等)の開発に携わる。2002年株式会社A&T研究所を設立。免震マンション、商業事務所、免震戸建て住宅の設計を手がける。

公式サイト:http://archi-tech.co.jp/